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ぶろぐ

理転もしたけれど、わたしはげんきです。

積読記:現代アートの本当の学び方(会田誠 他)

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現代アートの本当の学び方 (Next Creator Book)

現代アートの本当の学び方 (Next Creator Book)

 

 

1. 会田誠氏の言葉を追ってみた

 

本書を手にしたのは、とにかく会田誠氏の言葉をあらゆる角度から捉えたいという単純なものでした。Twitter(@makotoaida)で時折垣間見える、世間を冷静に眺めてカジュアルに批判する姿勢に感銘を受けたことで好きになり、今では最も好きな現代芸術家です。

 

本書では、同じく芸術家の日比野克彦氏との対談という形で、自身の経歴を基にして「『答えがないアート』をどう学ぶか?」について話をされています。本書の主題に沿った題材であるため、トゲのある見解は見受けられませんが、いくつか気になった発言があったため、ここに留めておきます。日本文化に関する話では猪子寿之氏と、作品制作に関する話では宮崎駿氏とのつながりをここでも感じてしまいました。特に、172ページの引用部分については、全く同じことを宮崎氏も著書で言及されています。

 

33ページ:
少数の富裕層と、そのお金持ちが買う決断をするために美術評論家からお墨付きを与える……世界的にはアートってそういうシステムで動いている。でも日本だとそのシステムが通用しないんですよね。ある意味では日本のほうが高度に発達していて、先に行っちゃっていて、「アートのお墨付きでは騙せない」と言えるのかもしれない。そういう風潮が日本グラフィック展の頃からはじまっていて、現代のサブカルの隆盛などにもつながっている可能性がある。

 

172ページ:
不安がなくなった人がものをつくるとどうなっちゃうかというと、困ったものになります(笑)。実際そういうものはいっぱいあるんですけどね。例えば晩年の黒沢明映画とか、不安を感じて撮っていない気がする。黒沢の全盛期、みんなで知恵を出し合いながら映画をつくっていた頃、ヒットするかなと不安になりながら『七人の侍』をつくっていた。そのほうが結果としていい映画ができている。

 

2. 芸術と文化・芸術の価値(その他の論考から)

 

当初は、会田誠氏の部分だけを読むつもりだったのですが、思いがけず全ての章が面白かったため読破しました。キュレーター・学者・評論家など、多様な角度からアートに携わっている方々の論考から、芸術・文化・歴史の捉え方に関連する知見を得ました。

 

70-71ページ(大野佐紀子氏):
デッサンとは言わば、三次元世界を二次元上に再現的に演出する、一種の詐術です。それぞれの詐術には「型」があります。再現的リアリズムはさまざまな「型」の組み合わせによってできているとも言えます。

 

113ページ(土屋誠一氏):
先にも言ったように、「日本美術史」は、近代国家としての日本の成立とパラレルです。日本美術から受ける感動を、日本国民としての自らの立ち位置に、過剰に同一化しようとすることは、この広い世界を否定する排他的な思考に陥ることになります。私は、美術は自由であることの可能性を拓くものでなければならないと考えています。そのためには、他者を除外しようとする排他的な思考など、もってのほかです。

 

185ページ(日比野克彦氏):
アートの領域で動いている身としては、アートはアートでおとなしくしていようとは思わない。当然、アートというものが、世の中に対してやれることはある。例えば経済があるから日本があるんじゃなくて、文化があるから日本があるというところを忘れがちな部分ってあるじゃないですか。だったら、日本という形をつくっているものを、国や地域を、美術に代表されるような「文化」というものが、成立させているということを表現しなくちゃいけないと思う。それはなくしちゃったら、国も地域もなくなっちゃうでしょうから。